2002年秋大用脚本

「NAVYSONGは響いてる」

                    作  熊谷 徳朗

 

    キャスト

 

群青 薫 〈グンジョウ カオル〉      フリーター・男

ラベンダ                     天使・女

深水 晶 〈フカミ アキラ〉           無職・男

海谷 奈州雄 〈ウミヤ ナスオ〉      警察官・男

空山 日和 〈ソラヤマ ヒヨリ〉      警察官・男

 

                               

                                    

 

 

舞台には3人の人がいる。群青薫、姫月すみれ、深水晶である。

三人ともシルエット。真中にはギター。サス。バックには十字架。

 

すみれ 牧場の裏には『僕達の聖地』がある。

深水  今は誰もいなくなった、小さな教会。

群青  そこは僕達子供の遊び場だった。

すみれ その教会が私達の原点。

深水  単純な「恋」の象徴。

群青  だけど僕らは大人になった。

 

スリップする音。

 

三人  もう戻れない…。

 

そのまま去る、三人。ギターへのサス、消える。

溶明。舞台は警察署の一角。いすに腰掛け仕事をしている男がいる。海谷だ。

そこへ空山登場。手には資料。妙にご機嫌。

 

空山  おお、海谷、こんなところにいたのか。探したよ。

海谷  あ、どうも、空山警部。あれぇ?今日はやけにご機嫌じゃないですか。

あっ、ひょっとして奥さん帰ってきたんですか?

空山  お前、何でそれを?

海谷  あっちこっちで、婦警がうわさしてますよ。いい年していつまでも夢

なんて追っかけてるから奥さんにも逃げられるのよ、って。

空山  女なんかに男のロマンが分かってたまるか。

海谷  で、奥さんどうなんですか?

空山  ふふん。昨日、実は妻からの手紙が届いた。

海谷  おお。

空山  『私も子供も楽しくやってます。だから探さないで』だって。

海谷  うぁ…。大丈夫なんですか?

空山  大丈夫なわけあるかー!おかげで俺の生活乱れまくりだ!メシはくさ

いし、家はゴミだらけ、このシャツだって4日目だし、犬のチャッピ

ー餓死寸前だ。

海谷  そこだけは乱れないで下さい。人として。

空山  幸子ー!カムバーック!!

海谷  はいはい。じゃあ、何でご機嫌だったんですか?

空山  久々のまともな仕事だ。

海谷  やったじゃないですか。で、どんな?

空山  うむ。今ウチの署に保護して欲しいという男が来ているんだがな。

海谷  何ですか?それ。

空山  何でも何者かに命を狙われているとか。

海谷  ただの被害妄想かなんかじゃないですか?

空山  あんまりしつこいんで俺のところに回されてきたんだよ。

海谷  …ロクな仕事じゃないっすね。

空山  と思うだろ。だがしかーし。いろいろ調べてるうちに妙なことが分か

    ってな。

海谷  また始まったよ。どうせ些細な事なんです。ほじくり回してないで

    さっさと解決しちゃいましょうよ。

空山  かぁ、最近の若いもんはどうしてこう、夢がないんだ。…まぁいい。

実はお前にはその事で聞きたいことがあってな。

海谷  聞きたいこと?

空山  お前、群青薫という男を知っているか?

海谷  …ええ。友人です.。彼が何か?

空山  さっきいった男、彼なんだ。

海谷  ええ?

空山  プロフィールを書かせたら、お前と住所が同じだったんでな。

海谷  ああ、一緒に住んでるもんで。

空山  あら、奈州雄ちゃん、同棲してるの。

海谷  嫌な言い方しないで下さい。昔僕と彼でバンド組んでたんです。で、

    活動するのに一緒の部屋の方がいいって。もうとっくに解散はしたん

    ですけど。

空山  お前、音楽やってたのか。

海谷  これでもこの辺ではかなり有名だったんですよ?

空山  そうか…。なるほどな。

海谷  それで?その妙なことって一体何なんです?

空山  おお、そうだった。これだよ。(資料を差し出す)

海谷  『群青薫、昭和52年7月20日生まれ…』これ、彼のプロフィール

    じゃないですか。

空山  本人に間違いはないか?

海谷  ええ、現住所と電話番号は間違ってますが、残りは確かに薫ですよ。

空山  …そうか…。

海谷  どうしたんですか。

空山  何年か前にどっかの社長が殺されたって事件があったろ。ほら、犯人

    が記憶喪失者だったってヤツ。

海谷  ああ、そういえばそんなのあったような…。

空山  その時の犯人のプロフィールを鑑識のほうが出してくれたんだがな。

海谷  ええ。

空山  そのプロフィールがそれなんだ。(資料をさす)

海谷  は?

空山  その犯人は殺害を犯した直後に死んでいる。つまり群青薫と名乗る人

    物は、何年も前に死んだ人間の名を語っているんだ。

海谷  他人の空似ってヤツじゃないですか?

空山  アホか。それは中身は別で外見が同じってやつのことを言うんだ。今

    回は違う。

海谷  外見は違うのに中身が同じ?

空山  (うなづく)どうも、こいつは事件のにおいがプンプンしやがる。

海谷  いえ、それはありません。

空山  何?

海谷  彼は…薫は嘘をつくような奴じゃありません。それは俺が保証します。

空山  おいおい、私情をはさむな。これは…。(電話が鳴る)もしもし、はい、

    何か?ええ、群青薫なら取調室にいますが…。え、逃げ出した?

 

暗転。オープニング。

 

曲のシメと共に出てくる主人公、群青薫。音楽に翻弄されるように。舞台にはギター。

ギターに近付く群青。

 

群青  どこだ、ここは?…ギター?(ギターの音)な、何だ?…俺に弾けと?

    (ギターに触れる。明るくなる照明。そして歓声)なんだよ、やめて

    くれよ。俺には何にもない。何もできないんだ。俺は…。俺は…!(後

    ろに写る女の影)…すみれ?すみれなのか?…違うんだ。俺は君を忘

    れたわけじゃない!俺は…。俺は…!!俺は誰なんだ?俺は群青薫…、

    いや、違う。違うのか?

 

ナイフを持った男、深水登場。

 

深水  お前は忘れてしまったかもしれないがな。俺は忘れちゃいない。

群青  誰なんだ?一体何なんだ?

 

襲い掛かる深水。軽く取っ組みあって群青刺される。倒れる群青。去る深水。

影も消える。舞台に残るのはギターと群青だけ。

 

群青  すみれ…違うんだ。すみれ…。

 

溶暗。すずめの鳴き声。舞台は群青と海谷の部屋。海谷が疲れきった表情で帰宅。

 

海谷  結局徹夜だよ…。ったく、薫の奴どこ行ったんだ?電話にも出ないし。

とりあえず一旦寝てからだな。こんな朦朧とした頭じゃ見つかるもんも見つからない。

…薫、ただいまー。っなんて、いるわけ…。

 

倒れたままの群青。

 

海谷  なくもないな…。(急いで駆け寄って)おい、お前電話くらい出…。(薫

の肩から血)…なんじゃこりゃー。(間)ふざけてる場合じゃない。薫!おい、薫!どうしたんだ?薫?

群青  …すみれ…すみれ!!(目が覚め、海谷の顔を見る)って誰だ?

海谷  知るか。それより薫、お前その肩の傷…。

群青  イタタ。帰る途中で襲われたんだ。

海谷  何だって?一体何で?

群青  分からない…。覚えてないんだ。

海谷  覚えてない訳ないだろ。それに、昨日だって取調室から逃げたりして、

一体どうしたんだ?お前。

群青  取調室…。そうだ、思い出した。

海谷  どうした。

群青  すみれ…。

海谷  …。

群青  って誰だ?

海谷  お前言ってる事メチャクチャだぞ。

群青  違う。確かに思い出したんだ。前からずっと気になってた、すみれっ

て名前の女。…だけど。忘れてるんだ。

海谷  おおかた初恋の女の子かなんかじゃないか?

群青  それだけじゃない。俺自身についてもだ。俺は俺じゃなくなってるん

だ。いつのまにか。

海谷  おい、どうしたんだ。お前やっぱりなんか変だぞ?

群青  きっとこれは最近俺が襲われてるのにも関係してる。

海谷  落ち着け。

群青  俺は一体誰なんだ?俺は本当のことが知りたい。

海谷  落ち着けって!

群青  海谷…。

海谷  お前らしくないぞ。ほら、深呼吸して、落ち着けよ。

群青  …こいつを見てくれ。(ポケットからメモを取り出す)

海谷  ん〜?ラベンダ、090−07214545。ケータイの番号と、

葵凪村?聞いたことないな。それから…牧場の絵?…この紙は?

群青  俺にもさっぱりわからない。だが確かに俺が書いたもんだ。

海谷  どういうことだ?

群青  気が付いたらそれを握って立ってたんだ。そしたらいきなりナイフで

襲われて…。

海谷  覚えてる限りでいい。昨日取調室にいたのは覚えてるか?

群青  ああ。

海谷  よし、その後何があった。最初から順を追って話してみろ。

群青  …ああ。

海谷  それよりもまず、傷の手当てからだな。ちょっと待ってろ。(部屋を去

る)

 

群青椅子に座る。時計の音。舞台は取調室に変わっている。回想。

空山がやってくる。

 

空山  なるほど。つまり2ヶ月くらい前から何者かに命を狙われていると。

群青  …本当に身に覚えはないんです。多分。

空山  多分?

群青  あ、いえ。…これ書けました。(プロフィールを渡す)

空山  (プロフィールを見て)この住所どこかで…。すみません、私は調べ物を

してくるので、そのまま座って待っていてください。

 

空山去る。群青うなだれる。

 

天使  (声だけ)浮かない顔してどうしたの?

群青  誰だ?

 

自称天使ラベンダ、臆面もなく派手に登場。

 

天使  お悩みですか、お悩みですね?だけど安心ご用心!あなたの記憶をが

っちりガード!メモリーガードのプリティエンジェル!ただ今参上!

 

間。

 

群青  …俺の頭もいよいよ駄目だな…。

天使  ちょいと、そこのあなた!勝手に人を幻覚にしないでくれる?

群青  日本の警察は何やってるんだ?

天使  私はそういう趣味のある婦警さんでもありません。ちゃんと自己紹介

したでしょ?聞いてなかったの?

群青  突然すぎてさっぱりわかんないって!

天使  じゃ、もう一回言うわね?浮かない顔して…

群青  ああ!いいからいいから!何者なんだ、あんた!!

天使  だから、メモリーガードの者です。

群青  メモリーガード?

天使  そう、簡単に説明すると『天界の記憶管理局』ってこと。で、あなた

は前にウチの局で記憶を買ったんだけど、その時に出来た記憶のひず

みが今になって出てきちゃったらしいの。という訳で、本日はそのお

詫びに来ました。

群青  訳がわからないんだけど。

天使  あなた、青木静雄さんですね?

群青  違います。

天使  いえ、あなたは青木さんです。

群青  いや、はぁ?

天使  OK?青木さん。

群青  ちょっと待って!俺は群青薫。その青木って人じゃないんです。

天使  (何かの本を読み出して)いえ、合ってます。これは昔のあなたの名

    前です。納得して下さい。

群青  ああ、はい。あの、お詫びって?

天使  まあ、ともかくとして、こちらも仕事で仕方がないので、サクサクッ

と進めちゃいましょ。

群青  これ、お詫びの用なんだよね?

天使  天界がお詫びにと、あなたにどんな記憶でも1つ寄贈するそうです。

    さあ、あなたが今一番知りたい記憶は何?

群青  とりあえず、あんたの素性を詳しく説明してくれ。

天使  そんな記憶でいいの?

群青  それくらいただで説明してくれないのかよ。

天使  じゃ、説明しちゃいまーす。私たちメモリーガードは人間界の全ての

記憶の管理をするのがお仕事。例えば本当ならありえない事に遭遇し

ちゃったりする人とかいるでしょ?その人達から記憶を除去してあげ

たり、新しく記憶をあげたりしているの。

群青  どうでもいいけど馴れ馴れしいな、あんた。

天使  大きい意味では全部の記憶を管理するわけだから膨大な情報が必要な

んだけど、副業として記憶の売り買いもやっているの。

群青  記憶の売り買い?

天使  そう。膨大な記憶を集めるために、ほんの一部の人間に記憶を売って

もらったり買ってもらったりしているの。

群青  そんな馬鹿な。

天使  試してみましょうか?

群青  試すって?

天使  じゃん。(ビンを取り出す)あなたフォアグラって食べたことありま

す?

群青  そんな高級そうなもん、食べたことないよ。

天使  そんなあなたにこれをプレゼント。『フォアグラを食べた時の記憶』で

す。全ての記憶はこの記憶水として保存されています。

群青  胡散臭いにもほどがあるぞ。

天使  さあ、飲んで。

群青  ええ?

天使  飲まなきゃ効果は現れないわよ。

群青  毒とか入ってないよな。

天使  ちょっと、話が進まないでしょ?

群青  わかったよ。飲むよ!(意外にいい飲みっぷり)うわ、苦…。

天使  さあ、フォアグラを食べたときのことを思い出してみて?

群青  え?そりゃもう、なんていうかコクのある、繊細で、それでいて爽快

な…。…うまいけど、これフォアグラか?

天使  何ぶん作者も食したことないから。

群青  は?

天使  いえいえ、こっちの話。ちなみに天界はお金なんていらないから、売

    ったり買ったりする時は、その本人の持ってるもので適当なものを選

    びます。

群青  何?

天使  例えば、今のフォアグラなら向こう3日メシ抜きとか。

群青  ああ。

天使  どう、信用してくれた?

群青  …信じらんないけど記憶の売り買いをしてるってのは本当らしいな。

天使  で、どんな記憶が欲しい?

群青  …あんた、俺が昔そのメモリーガードから記憶を買ったって話したよ

    な。それはどんな記憶なんだ?

天使  今のあなたの記憶全部よ。群青薫って人の記憶。本物の群青薫って人は3年前に死んでるわ。

群青  何だって?

天使  ええ、3年前に何があったか知らないけど、あなたがその記憶を買っ

てる。

群青  じゃあ、今の俺は偽者ってことか?

天使  よっぽど辛いことでもあったのね。何もかも忘れて人生新しくやり直したくなるほどの…。

群青  そんな…。

天使  で、記憶を新しく書き換えるとなると、私たちも色々ケアするんだけ

どね。やっぱりどうしてもひずみってできるもんで。

群青  じゃあ、本物の俺の記憶ってのは一体どこにあるんだ?

天使  そういうと思って、探してみたんだけど。所在不明だって。

群青  何だって?

天使  つまり、私たちでも分からないって事。

群青  そんなことあるのか?

天使  さすがに個人の記憶の管理ともなるとキッツイからねー。

群青  じゃあ、俺は一体…。

天使  さて、どんな記憶がほしいの?

群青  (しばらく考え込んで)…そうだ。すみれ…。

天使  何?

群青  その記憶はどんなものでもいいんだよな。

天使  ええ。

群青  …すみれという女について知りたい。

天使  誰?

群青  知らないから知りたいんだ。分からないんだけど、この人は俺の過去

に何かかんでる。何か事あるごとにすみれという女が、俺の頭の中で

喚くんだ。

天使  あなた実はヤバイ人ね。

群青  違う!思い過ごしならそれでいいんだ。

天使  …わかった。ちょっと調べてみるわね?(本を取り出して)あ、ひょ

っとしてこの姫月すみれって人のことじゃないかしら。

群青  姫月…すみれ?

天使  ええ、確かにこの人なら、前に関わったことがあるわよ。

群青  その人、一体誰なんだ?一体俺に…

天使  わかんない。

群青  わかんないって。

天使  この、姫月すみれって人。記憶を全部買い占められてる。

群青  へ?

天使  守秘義務ってのがあるから詳しいことは言えないんだけど、誰かが『姫

月すみれの記憶を持つ人物全てから、姫月すみれの記憶を買い占めた

い』って依頼してる。

群青  何で?

天使  さあ?

群青  じゃあ、俺がそいつから記憶を奪うって、できるか?

天使  OKです。

群青  本当に?

天使  だって、そういう条件だし。

群青  じゃあ、頼む。

天使  はーい、じゃあ、取り寄せるわね。(またもや、ビンを取り出す)

群青  …空のビン?

 

天使そのビンを握り締め、祈るようなポーズ。

 

天使  はい、どうぞ。

群青  …これが…。

天使  天界から取り寄せました。

 

群青、飲む。そのまま溶暗。

舞台は再び海谷の部屋。海谷が群青を手当てしている。天使の姿はない。

 

群青  …で、記憶はそのままそこで途切れてて。

海谷  …唐突に信じろ言われても無理っぽい話だな。

群青  うそじゃない。本当なんだ。俺が今までに嘘をついたことがあるか?

海谷  大丈夫。俺は信じてるよ。

群青  …ありがとう。

海谷  さて、と。手がかりはこの紙に書かれたメモだけか。

群青  ああ、どういう意味だと思う?

海谷  …多分、これはお前からお前へのメッセージだな。

群青  え?

海谷  昨日の今日で、ここまですっぱり記憶が途切れてるってやっぱり不自

然だろ。お前の話が本当なら、考えられるのは一つ。そのメモリーう

んたらがお前から奪っていったってことだ。

群青  メモリーガードが?

海谷  ああ。その、すみれって奴の記憶を買い占めてる奴から記憶を奪った

んだろ?そいつの対象は『すみれの記憶を持ってる全ての人物』。って

ことはすみれの記憶が戻っちまった時点で、また奪い返されるって訳

だ。

群青  なるほど。

海谷  昨日、すみれの記憶を飲んじまったお前はその後奪い返されるまでの

記憶を奪われた。だけど、その前にその記憶のヒントになることを紙

にメモしておいた。…どうかな?

群青  確かにだとすればつじつまは合う…。…お前、すごいな。

海谷  伊達に刑事やってないって。…で、このメモなんだけど…。

群青  葵凪村とか牧場ってのはやっぱり場所かな?

海谷  まあ、それは後で調べてみよう。

群青  あとはこのラベンダっていう電話番号か…。

海谷  怪しさ爆発だな。

群青  …とりあえず、かけてみるか?

海谷  そうだな。誰につながるかは分からないけど、少なくとも昔の知り合

いであることは確かだろうし。

群青  うまくいけば、すみれ本人につながる可能性もある。

 

海谷、群青に電話を貸す。群青それを使ってかける。

間。どこからともなく聞こえてくる。無駄にハイテンションな着メロ。

天使ラベンダ、再登場。

 

天使  浮かない顔してどうしたの?お悩みですか、お悩みですね?だけど安

心ご用心!あなたの記憶をがっちりガード!メモリーガードのプリテ

ィエンジェル!ただ今参上!

群青  帰れ!

海谷  こいつが噂のメモリーうんたらか。

天使  メモリーガードですぅー。

群青  なんでお前が出るんだよ!

天使  だって、私のケータイにかけたでしょ?

海谷  ケータイって最近じゃ天使にも普及してるんだ。

群青  何でお前の番号が書いてあるんだよ。

天使  私の連絡先を聞いたのはあなたよ?

群青  え?

天使  もしもの時、また記憶を買うかもしれないからって。

海谷  確かに賢明な判断だな。

天使  そんでもって、私がべつのメモリーガードが奪いに来るからメモでも

残すか、さっさと逃げなって教えてんやったじゃない。忘れたの?

群青  ごめん。覚えてない。

海谷  なるほど、それで取調室から逃げたのか。

群青  じゃあ、このラベンダってのは?

天使  私の名前。

群青  ラベンダ…ねえ…。

天使  何よ。文句あんの?

群青  いや、別に。

天使  で、一体何の用?

群青  いや、そうとわかったら間違い電話だ。ごめん。

天使  何それ。

海谷  手がかりは葵凪村と牧場ってだけか。

天使  手がかりって静雄っちの前の記憶?

海谷  違う。すみれの方…。(何かに気付く)

群青  ってか静雄っちって。

天使  だから言ってるでしょ?あなたの本当の名前は青木静雄だって。

群青  それ別にしても馴れ馴れしすぎじゃないか?

天使  だって今日はオフだもん。カタ苦しいのはぬき。

群青  はぁ?

海谷  そうか!ひょっとしたらそっちに何かヒントがあるかも知れない。

群青  どうした?

海谷  考えてもみろ、俺とお前の付き合いは何年になる?今年で6年目だ

ぞ?

群青  ああ、そうだな。

海谷  って事は俺も昔のお前と関わってるんだ。

群青  あ、なるほど。ラベンダ、俺が記憶を書き換えた日って分かるか?

天使  もちろん。でも何で?

海谷  俺は中学の頃から毎日日記をつけてるんだよ。(日記を取りだす)

群青  書き換えた日に俺に何があったかが一発で分かるって事。

天使  なるほど。ちょっと待ってて。今調べるから。(本を取り出して探し始

める)えっとねぇ。あった。3年前の9月18日。この日に記憶を買

い取ってるわ。

海谷  三年前の9月…と。18日。あった。えっと…。『シズが帰ってきて4

日目…』

天使  シズって?静雄のシズ?

群青  知らないよ。ただ、俺のバンドでの名前。

海谷  『シズが帰ってきて4日目。今日やっと口を開いてくれた。どうも様

子がおかしい。今まで名乗ろうとしなかった自分の本名を言い出し

た。』そうだ。確かこの頃まで互いに自分を明かしてなかったよな。

群青  そうだったか?

海谷  下手に互いを知りすぎると音楽が廃れるって言ってさ。

天使  つまり、この日に、静雄っちは初めて名前を明かした訳ね?

海谷  ああ、そんでいきなり音楽を止めるとか言い出したんだ。

群青  この日に一体何があったんだ?

海谷  正確にはこの日じゃない。思い出したよ。その直前お前は行方をくら

ましてるんだ。

群青  何だって?

海谷  ここにも書いてあるだろ?帰ってきて4日って。その一週間前の9月

11日にお前は旅に出るって書置き残して、いなくなってたんだ。そ

してその3日後の14日に帰ってきたんだ。それからのお前はまるで

死んだみたいだった。時折何かつぶやいて、飲まず食わずでさ。

天使  どう考えても何かあったわね。

群青  ああ。

海谷  (突然携帯が鳴る)もしもし。はい、ええ。えっ?だって今日僕非番

…。そんなぁ!昨日だって徹夜だったんですよ?少しは休ませ…はい、

わかりました。いきますよ、行きゃあいいんでしょ、行きゃあ。…い

え!喜んで行かせていただきます!!(携帯きる)

群青  どうした?

海谷  警察お得意の土壇場出勤でございます。

天使  大変ね。

海谷  というわけで、仕事行ってくる。とりあえずお前は怪我してるんだ。

ゆっくり休んでけ。ラベンダさんもゆっくりしていきな。今後どうす

るかは帰ってきてから話し合おう。

群青  おう、分かった。いってらっしゃい。

 

海谷去る。

 

群青  (肩の傷を抑えながら)…うし。

天使  ちょっと。どこ行く気よ。

群青  決まってるだろ?俺を探しに行くんだよ。

天使  ちょっと、そんなに焦る必要はないじゃない。

群青  不安で仕方ないんだ。

天使  え?

群青  なんもかんも信じられなくなったようなモヤモヤした感じ。嫌なんだ。

天使  …。

群青  俺は本当のことが知りたいんだ。

天使  …分かった。じゃあ、私も行く。

群青  え?

天使  オフっつっても暇なのよね。

群青  おい、ヒマとかで…。

天使  それに静雄っち、すみれって人の顔覚えてないんでしょ?

群青  え?…ああ。

天使  私の顔に似ているらしいのよ。昨日、あんたが記憶を飲んだ後でそう

言ってた。

群青  …分かった。行こう!

 

群青、天使去る。溶暗。

舞台は森の教会。深水晶が入ってくる。手には記憶の入ったビン。

 

深水  ふん、僕から奪おうなんて馬鹿な真似を…。(ビンを光にすかしてみた

り)…すみれ…。(飲み干す)

 

そのまま深水が飲んだ記憶の回想シーン。

舞台は牧場。群青がギターを持って入場。適当に腰掛け、ギターを弾こうとする。

そこにあらわれるすみれ。

 

すみれ また、ギター?

群青  すみれ。落ち着くんだ。ギター弾いてると。

すみれ 本当にすきなんだね。

群青  俺が人に自慢できるもんつったらこれしかないし。

すみれ だけどまた仕事の合間に隠れてやったりして。見つかっちゃったら大

変だよ?

群青  ははは…。ここは風が気持ちいいな。

すみれ 本当。

群青  …今さ。曲を作ってるんだ。

すみれ え?すごいじゃん。

群青  初めてのことだからぜんぜん分からなくてさ。だけど、もっともっと

練習して、たくさんの人を感動させられるような歌を歌いたいんだ。

すみれ …いいじゃん。がんばりなよ。

群青  ありがとう。

深水  はっはっは。歌うたいか。下賎な君にお似合いの下賎な夢だね。

すみれ 晶さん。

深水  使用人のくせに仕事をサボってギターか。随分偉い使用人だな。

群青  晶さん、使用人ってのは親父の代までの話だ。確かに今も深水家には

お世話になってるけど、それを俺やすみれにまで…。

深水  だまれ。いいか?君たちは使用人だ。身の自由なんて許されない。僕

の言うことを聞いてりゃいいんだよ。

すみれ 晶さん、それは…。

深水  おい、使用人。牧舎の肥溜めがいっぱいになってるんだ。臭くてかな

わない。なんとかしろ。いいな。…すみれ。いい紅茶が手に入ったん

だが、一緒に飲まないか。

すみれ いえ、私は…。

深水  いいから、来いよ。

 

すみれ、引っ張って連れて行かれる。群青、ギターをかき鳴らし、去る。

深水が出てくる。手には銃。

 

深水  あの頃から…ずっと…。ずっと俺の邪魔ばかり…。すみれ…。もうす

ぐだ…。もうすぐ一緒になれるんだよ。そうしたら必ず…必ずあいつ

を殺してやるから。

 

溶暗。

舞台は葵凪村の駅。群青と天使。

 

天使  着いたー!ここが葵凪村ね。

群青  うわ、展開早っ!あっという間に着いたな。

天使  チンタラやってたらあっという間に公演時間オーバーよ!さ、サクサ

    ク進もう!

群青  何の事を言ってるのか知らないけど、そうだな。

天使  にしても、ここって本当に何も無いわねー。本当田舎町って感じ。

群青  まあ、村だしな。

天使  あ〜あ、つまんない旅になりそう。

群青  つまんないってお前なぁ。

天使  だってつまんないんだもーん。

群青  牧場に着いたら牛さんやお馬さんがいるから。

天使  そんなん見て何が楽しいの?

群青  うはっ!そういうこというか。勝手に着いてきておきながら。

天使  一緒にいるのはこんな冴えない男だし。

群青  なんで突然ケンカ腰なんだよお前!!

天使  私様気まぐれなので。

群青  なんだよそりゃ!ったくお前それでも天使かよ。

天使  さあ?

群青  『さあ?』?

天使  死んでから、気がついた時にはもう今の仕事してたし。

群青  …死んで?へ?

天使  言わなかったっけ?私死んでます!

群青  天使って嘘じゃねえか!

天使  いや、ほら、何か記憶うんぬんって仕事、天使みたいでしょ?

群青  だから天使って?

天使  そ、「自称」天使ってわけ。大体の話、私バイトだしね。

群青  学生か、お前は!

天使  結局ね、使い捨てなのよ。私らみたいな末端は。

群青  え?

天使  記憶を司る。そこに私情は絶対に挟んじゃいけない。だから、私たち

は自分ってものがもう無いの。

群青  どういうことだ?

天使  記憶を買うでしょ?そういう時は自分の中でそれと同じ価値のあるも

    のを払うとも言ったわよね。

群青  ああ。

天使  買いたい記憶が大きいものになっていくと、払うものも大きくなるの。

群青  例えば?

天使  自分の人生とか。

群青  そういう奴が天使になるって訳か。

天使  うん。

群青  じゃあ、ラベンダは…。

天使  見て。(濃い青の色をした液体を取り出す)これが私の記憶。

群青  青いな…。とても深い青だ。

天使  それを一口でも飲めば、私は契約違反で地獄行きって訳。

群青  え?

天使  他の天使はみんな捨てちゃえって言うんだけど…。捨てられなくて。

群青  ごめん。俺だけ記憶が無くて不安みたいなこと言って。

天使  いいのよ。その気持ちはよく分かるから。

群青  ラベンダ…。

 

海谷が出てくる。家に電話。出ない。もう一度、今度は携帯へ。着信が鳴る。

 

海谷  おい!薫!お前一体どこいるんだ!!

群青  え?…えっと…。(天使に携帯奪われる)

天使  もしもし?今お家いるよ?

海谷  じゃ何で家電につながらないんだよ。

天使  あ、ごめん。圏外。

海谷  嘘つけ!!…そりゃまあ、お前がじっとしてるとは思えなかったけど。

群青  (携帯を奪い返して)海谷、あのさ。俺…。

海谷  いいって。わかってる。ただ覚悟しておけよ?昨日、警察署から逃げ

    出してるんだ。目ぇ付けられてるぞ?

群青  …。

海谷  それとな。葵凪村の牧場について調べてみた。駅から見て北東のほう

    、小高い丘がないか?

群青  小高い丘?

天使  あれじゃない?

海谷  葵凪村にはそこにしか牧場はない。例のメモがそのまま場所を指すん

    だとすればソコだな。

群青  いい具合に展開が早いな。

天使  不恰好にうろつく様なんて見てもダレルだけだしね。

群青  だから、そういうこと言うなって!

海谷  そこの牧場な、実は今はもう潰れているんだ。

群青  え?

海谷  2年前まで深水って奴が経営してたんだがな。いつの間にか潰れてた

    って話だ。

群青  何で?

海谷  わからん。今調べてる。それに姫月すみれって女についても。

群青  ありがとう。

天使  あ、牧場ってアレじゃない?ほら!

群青  あれが…!

海谷  薫。ただでさえ、殺されかけたりしてるんだ。俺もそっち向かうから

    それまで待ってろ。

群青  悪い。切る。(電話を切る)

海谷  おい!薫!!(ツーツーツー)

 

そこへ資料を持った空山、入場。

 

空山  おい、調べてきたぞ!この姫月すみれって奴。

海谷  ありがとうございます。

空山  これが本当に群青薫の居場所の手がかりになるんだろうな。

海谷  ええ。必ず。

空山  おお!サスペンスの臭いがプンプンプンプンする!ガゼンやる気出て

    きたぞぉ!

海谷  ええ、そりゃもちろん、サスペンスあり、ラブドラマあり、ガンアク

    ションありのポロリもありですよ。

空山  よっしゃあ!

海谷  で、姫月すみれについて何ですが…何かありました?

空山  おう、あったあった。これだ。1件だけだな。3年前の9月の記事だ。

海谷  (資料を渡されて読む)…これ…。

空山  うむ。行方不明になってるようだ。

海谷  日付は…9月13日?…確か…薫が…。

空山  何か知ってるのか?

海谷  いえ、何も…。

空山  その顔は知ってるな?

海谷  そんな事はないですよ。

空山  黙っていたっていい事はないぞ?

海谷  別に何も隠してないです。調査を続けましょう。

空山  群青薫の居場所か。

海谷  違いますって!僕は何も知りません。

空山  正直に言っとけ。

空山  海谷。刑事ってのはな、冷静じゃなくてもいい。夢見がちでチャンス

    を棒に振ったっていい。だが、嘘だけはつくな。

海谷  だから、何も…。

空山  お前が友達を信じてるのは分かる。だったら、それを証明するために

    も言うんだ。

海谷  …。

空山  俺たちの仕事は、人を捕まえることじゃない。罪のない人を助ける事

    だ。こんな所にいたって、事件は解決しないんだぞ?

海谷  …しかし。

空山  ああああ、もう!しかしもヘッタクレもねえ!来いっつったら来るん

    だよ!!こんな所で机にかじりついてて何がおもしれえんだ!俺はつ

    まんねえよ!退屈だよ!たまにはちゃんとした仕事してえよ!わりぃ

    かよ!どーせ刑事ドラマの見すぎだよ!いいじゃねえかよ!夢見てえ

    んだよ!こんな中年が夢見ちゃわりぃかよ!なんなんだよ!うるせえ

    なぁ、俺は!!

海谷  落ち着いてください!

空山  さあ、どうなんだよ!

海谷  …。

空山  けっ!じゃあ、そうしてろ!俺は向こうで拗ねてるから!あとで声か

    けろよ!

海谷  …3年前の9月13日、姫月すみれが失踪した日の直前、薫は行方を

    くらましてます。

空山  …?

海谷  そして、失踪した翌日14日。薫は帰ってきましたが、様子がだいぶ

    変でした。おそらく11日から13日の間に、薫と姫月すみれとの間

    で何らかの事件があったと思われます。

空山  海谷。

海谷  追いましょう!薫を!

空山  それでこそ男だ!

海谷  場所は葵凪村、牧場です。

 

空山、海谷、去る。

舞台は牧場の宿舎。今は廃屋になっている。群青。おくれて天使登場。

 

群青  何かあったか?

天使  なぁんにも。

群青  急がないとな、もうすっかり夜だぞ?

天使  そうね。

群青  にしても本当にぼろぼろだな。何もないし。

天使  うん。昔何があったのかしら。

群青  分からない…けど…。

天使  どうしたの?

群青  懐かしい感じがする。

天使  …そうだ、ちょっとねえ、不思議なことがあったんだけど。

群青  何?

天使  さっき、向こうに落ちてたんだけどね。ほら見て、私の写真。

群青  どれ?ってこれ、すみれの写真じゃないのか!?

天使  あ、そうだった。私に似てるんだっけ。

群青  …似てるなんてもんじゃないな。

天使  …女子部員少ないしね、しょうがないのよ…。

群青  そうじゃなくて!隣に写ってるのは…俺?

天使  やっぱり昔ここにいたのは間違いないみたいね。

群青  ああ。

天使  じゃ、私、向こうの部屋、もっとよく探しとくね。

群青  ああ、頼む。

 

天使去る。群青、しばらく写真を眺める。そこに銃を片手に現れる深水。

 

深水  久しぶりだな。静雄。いや、今は群青薫だったな。6年

振りか?

群青  誰だ?

深水  おいおい勝手に人の家に上がっておいて、誰だ、は無いんじゃないか?

群青  俺の事を知ってるのか?

深水  よく知ってるよ。子供の頃からの付き合いだからな。

群青  …。

深水  あははは!!そうだった。お前は全部忘れているんだったっけ?

群青  なぜそんな事まで?

深水  言ったろ?何でも知ってるさ。お前の知りたがってる姫月すみれの事

もな。

群青  お前は一体誰なんだ!すみれって誰なんだ!

深水  (銃を構えて)気安くすみれの名を呼ぶな!

群青  …俺を殺すのか?

深水  お前は本当にむかつくやつだよ。昔からご主人様であるこの僕に楯突

いてばっかりで…。

群青  ご主人様?

深水  そうさ。お前はこの牧場の使用人の子供だ。そして僕はこの牧場の地

主の子供。当然お前は僕の使用人だったんだよ。それなのに…。

群青  …。

深水  ギターだぁ?バンドだぁ?僕のすみれの気を引くような真似ばっかり

しやがって!挙句に僕の断りもなしに上京だ?ふざけるなよ!!

群青  俺が?

深水  すみれはな、僕のものになるはずだったんだ。だけどな、お前のせい

ですみれはな。すみれは…。すみれ…は…。

群青  …すみれの記憶を独占してるのも、俺を襲ったのもお前だな?

深水  そうだよ、僕だ!すみれはもう、誰にも渡させはしない。すみれは僕

と一緒になるんだ!

群青  この牧場が潰れたのも、記憶を買い占めるためか。

深水  こんな土地全部売ったくらいでそんな大金手に入るもんか。僕はな、

すみれの記憶を手に入れるために僕の命をかけたんだ。

群青  …詳しい話はわからない。すみれの事も分からない。けど…お前はそ

んな事をして満足か?

深水  偉そうに説教たれるんじゃねえよ!何もかも忘れたくせしてよ!すみ

れが行方不明になった時、お前は全部忘れて!逃げたんじゃねえか!

群青  行方不明?

深水  ああああ!!(銃を撃つ)

群青  (足を撃たれて崩れる)ぐあ!

深水  お前は…ギターで名前が売れた。その地位を失いたくなかったんだ!

群青  それは誤解だ!俺はもう音楽なんてやってない!

深水  すみれが傷ついて、僕も傷ついて、そんなときにお前は…のうのうと

…のうのうと…!お前なんか殺してやる!!(もう一度撃とうとする)

天使  (部屋に入ってくる)ちょっと今の音な…、わぉ!何々?悪い人?敵?

敵?エネミー?エネミー?

群青  来るな!

深水  …(天使を見てびっくり)…お前…メモリーガードか?

天使  そうよ!何か文句ある?

深水  …ふっ、ふふふふふ…!ははははははは!!そうか、そうか。

群青  何がおかしい!

深水  ふん、静雄。覚えてないとは思うが…。森の教会…分かるか?

群青  ?

深水  だろうな…。ははは…!お前はそうやって、一生頭抱えてろ。

 

深水去る。群青倒れる。

 

天使  ちょっと静雄っち?ねぇ!静雄っち?

 

溶暗。

 

 

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