『グランド・メガトン・パパ』  作・阪田智靖

 

 

 

声「先月12日に実施されました常識人間試験の結果が、今日、発表されました。

試験の内容は日本国民の一般常識を問題にした簡単なもので、結果、全人口

の99,8%に及ぶ人々が常識人間と判明しました。その一方、0.2%の

不合格者が出た事に、国民は不安を隠しきれずにいます。」

 

 父、新聞を読んでいる。

 

父「常識人間試験か・・・まぁ、大丈夫だろ」

母「みちよ〜、もう起きなさーい!遅刻するわよー」

父「みちよはまだ寝てるのかい?」

母「そうですよ。昨日の夜も遅くに帰ってきたし」

父「まったくもう」

娘「ちぃーこーくーすーるぅー!!」

 

 娘登場。

 

父&母「おはよう」

娘「なんで起こしてくれなかったの!?」

母「起こしましたよ」

娘「あーもう時間だ!行かなきゃ!」

母「ご飯くらい食べなさい」

娘「えー、いいよぅ!」

母「ご飯よそっちゃったんだから」

娘「わかったよぉ」

父「みちよも高校生なんだから、いいかげん自分から起きるようにしたらどうだ」

娘「わかってるよぉ!」

父「分かってるならちゃんとしなさい!大体、最近の子って言うのはね」

娘「お父さんうるさい」

父「うるさいとはなんだ!」

娘「だってうるさいんだもん」

父「みちよ!お前そんなんじゃ・・・」

娘「立派な大人になれないんでしょ?もう何度も聞いたから分かってるよ」

父「わかってないじゃないか!」

娘「わかってるもん!」

母「はいはいはい。朝っぱらから大きな声出さないで下さいよ!ちゃっちゃとご飯

片付けて下さい」

父&娘「はぁい」

母「そういえば、お父さん。結果届いたわよ」

父「なんの?」

母「常識人間試験よ。今日、結果発表じゃない」

父「あっそうかそうか、でその通知は?」

母「今持って来ますね」

 

 母、去る。

 

父「そういえば今日結果発表だったな。みちよは大丈夫だったか?」

娘「大丈夫に決まってるでしょ。全然簡単だったじゃない」

父「そりゃそうだな。はっはっは」

 

 母、帰ってくる。

 

母「はいこれ」

父「ありがと。おお、来てる来てる。それでは発表しまーす」

娘「落ちてるわけないじゃん」

父「え〜、まず中畑千恵子さぁ〜ん。・・合格〜」

母「はいはい」

父「じゃあ次ぎぃ。中畑みちよさぁ〜ん」

娘「早くしてよ」

父「・・・」

娘「早く」

父「・・・合〜格〜!!」

娘「当然」

父「そしてお父さ〜ん」

娘「行ってきまーす!」

母「いってらっしゃ〜ん」

父「・・・まったく、せっかくお父さんの発表の時に・・・(通知を見る)・・・不

合格と書いてある・・・私?」

 

声「なお不合格者は非常識人とみなされ、カウンセラーのもと、再び常識を叩き込

まれる子とになっています。」

 

 母、電話をしている。相手は父。

 

母「はい。分かりましたよ。じゃあ気をつけて帰ってきてね」

娘「母さん、私の下着どこぉ?新しく買った青いブラジャー」

母「選択したのは全部たんすにしまったわよ」

娘「ないよぅ」

母「ちゃんと探したの?」

娘「探したよぅ」

母「そう、おかしいわね」

娘「今電話してたの誰?」

母「お父さんよ。今、会社が終わって帰ってくるって」

娘「なんだお父さんか最悪」

母「そんな言い方するんじゃないの」

娘「だってお父さん、常識人間試験に落ちたんだよ!あんな簡単な問題だったのに」

母「その日はきっと疲れてたのよ」

娘「アタシにはあんなにえらそうな事言ってるくせに」

母「それはみちよの為に言ってるんじゃない」

娘「自分の父親が常識人間じゃないなんて皆に知られたら、アタシもう生きていけ

ないよ。」

母「そんな大げさな」

娘「大げさじゃないよ!今だってアタシ、みんなにバレないかひやひやしてるんだ

からぁ!お母さんがのんびりしすぎてんのよ!」

母「はいはい、でもお父さんが帰ってきたら試験の話しは禁句。お父さん相当まい

ってたから」

娘「ふーん。相当?」

母「相当」

娘「(にやっとして)どうしようかなぁ〜」

母「いい、本当に禁句よ!」

娘「はいはい」

母「ところでみちよ。進路のこと、お父さんに相談したの?」

娘「ん?まだ」

母「早く相談しなさい」

娘「分かってるけどぉ。ねぇ、お母さん言ってよぉ」

母「いやよ。大切な事なんだから、自分の口からちゃんと言いなさい」

娘「お父さんと話すのいや」

母「またそういうこと言う」

娘「だって絶対お父さん許してくれないもん、留学なんて。お母さんが言った方が

絶対効果的だって」

母「効果的とかじゃないでしょ。言ったじゃない、お母さんは反対しないけど、自

分の決めたことなんだから、全部自分でどうにかしなさい」

娘「そうだけどぉ。お願、一生のお願い!ね?」

母「あなた、一生のお願いが週3回もあるわよ」

娘「そうだっけ?」

母「でも、これだけはダメよ。本当に留学したいんだったら自分で言いなさい」

娘「ぶーっ」

 

 父、帰宅。

 

父「ただいまぁ・・・」

母「あ、帰ってきたわ。いい、みちよ?お父さんに試験のことは絶対禁句よ!」

娘「わかってるよぉ」

母「絶対よ!」

娘「わかってるってば!」

母「あと、なるべくガンガン盛り上げてね!」

娘「わかったって!」

母「おっかえりなっさーい!」(父のもとへ)

娘「・・・はぁ・・・」

母「さぁさ、お疲れ様ぁ」

父「(娘に)ただいま・・・」

娘「ん,おかえり」

母「外,寒かったでしょー?お風呂わいてますよ,先にお風呂にします,それとも

ごはん,はたまたあ・た・し?」

父「ごはんがいいな」

母「はあーい,お夕飯が先ね!ちょっと待っててね今準備するから」

 

 母,料理を準備しだす。

 

父「それと水くれるかな。」

母「はいよろこんでぇー!」

父「・・・」

娘「・・・」

母「はいお水ね。」

父「ああ,」

母「もうすぐごはんですからねぇ」

 

 そこへ電話の音

 

母「はいはーい今出ますよー」

 

 母,退場

 

父「・・・みちよ・・・」

娘「・・・ん?」

父「今日は何時頃帰ってきたんだ?」

娘「・・・9時半くらいかな」

父「ずいぶん遅いな」

娘「だって部活だもん。演劇部の公演近いし」

父「それにしても遅くないか?」

娘「だって部活終わったあとも友達の家で立ち位置とかの練習するもん」

父「友達の家はどこにあるんだ?」

娘「そんなことまで聞くわけ!?」

父「だって夜歩くのは危ないだろ」

娘「すぐ近くだもんいいじゃんそんなん。」

父「心配してるんじゃないか夜遅いのを」

娘「心配しなくて結構余計なお世話。」

父「そういう言い方をするんじゃない!」

娘「だってそうなんだもん」

父「みちよ!」

娘「お父さんだって,会社会社で毎日遅くなってるじゃない,常識人間試験落ちた

くせにえらそーなこと言わないでよ!」

 

 父,ショックに口あんぐり 泣きそうな顔でうなだれる。

 

娘「みっともないったらありゃしない。」

 

 母 戻ってくる

 

母「はいはいおまたせぇーって,お父さんがバタンキューだわ!ちょっとお父さ

ん?みちよ,あなたなにか言ったの?」

娘「べつにぃー」

母「ホントに?」

娘「うん,ほんのちょっと傷をえぐっただけ。」

母「言ってるじゃないのよ!お父さん,ほらしっかりして,ほら,もうごはんよ,

ほらお父さん!」

娘「お母さんそのお箸よく『おちる』から気をつけてね,『おちた』ら汚くなっち

ゃうからね」

母「こら!おちたおちたって強調しないの!」

 

 母,ホントに箸をおとす

 

母「あっ・・・落ちた・・・おっ 落ちたら又洗えばいいのよ,まったくねえ。」

娘「あっそうだあたしお年玉どのくらい残ってたかなあ?」

母「こら!みちよ,さっきからおちるとかおとすとかって強調するんじゃありませ

ん!」

娘「あたしはふつうにお年玉とかオットセイとかっていってるだけだよーだ。」

母「そんなにおちたおちた言ったらお父さん気にするでしょ!」

娘「あたしは別にお父さんに落ちた落ちた言ってる訳じゃないもん」

 

 娘,母,おちたおちたを連呼して言い合いをする。

 父突然立ち上がり,ふたりはビクリッ

 

父「ちょっと着替えてくる・・・」

 

 父 退場

 

母「ほらお父さんすごい気にしちゃったじゃない!」

娘「お母さんだって一緒になって言ってたじゃん。」

母「それはみちよを注意するためによ。」

娘「そう言えばカウンセラーって何?」

母「あぁ・・・常識人間育成センターからカウンセラーの方がくるのよ。」

娘「カウンセラー?何で?」

母「常識人間試験の勉強をお父さんに教えるんですって」

娘「いつ」

母「明日」

娘「明日?」

母「とにかくお父さん戻ってきたらちゃんと謝りなさいよ。」

娘「えーっ」

母「でないと本当に留学なんか許してもらえなくなるわよ。」

娘「うー そうだった・・・わかったよう。」

父の声「母さーん」

娘「ねえ お父さーん。」

 

 父,娘の探していた青いブラジャーを持って登場。

 

父「母さんタンスからこんなものが・・・」

娘「あ゛――――――っ!!」

父「わーーーーーーーっ!!」

 

娘,父からブラを取り上げ,

 

娘「最低,バカ,変態,ドエロっ!」

 

 娘,退場

 

父「???」

 

 父,母を見る。母 しまったという顔をして

 

母「やっちゃった・・・」

 

 沈黙 音楽と共に暗転

 

 暗い中に 男が一人

 

カ「常識とは何か?それは一人一人の心の中に なんてことは言いません。辞書を

引きましょう。辞書にはなんでも載っている 辞書を引くのがコレ『常識』で

す(辞書を引く)常識:社会一般の人が共通に持っている知識や価値判断・・・

これが常識です。そして社会一般の知識や価値判断を持ち合わせていない人間

を非常識といいます。そういった非常識は正さなければならない。そのために

私がいるのです。申し遅れました私日本常識人間育成カウンセラーの緑川で

す。」

母「あのぉ・・・お座りになってください」

カ「ああ,すいませんついいつものくせで常識を説いてしまいました」

母「頭でもお悪いんですか?」

父「とっとにかく・・・」

カ「ああはい,私が一週間,お父さんのカウンセリングを担当致します,緑川とも

うします。(名刺とパンフレットを手渡す)

父「どうも,中畑です・・・」

母「妻の千恵子です。」

カ「(千恵子に)あ〜はいはいはい。・・・で,あなたが中畑均さんですね。」

父「あ,ええ・・・」

カ「はぁ〜〜〜〜〜〜。」

父「・・・何ですか?」

カ「いえいえ。・・・はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

父「言いたいことがおありでしたら,言ってくださいよ。」

カ「それではカリキュラムの説明に入ります。」

父「聞けよ!」

カ「この度,常識人間試験を不合格なされたお父さんにはこれから一週間,カウン

セラーである私がカウンセリングを施しまして,一から常識を学んで頂きま

す。」

父「カウンセリングって・・・どんなことをするんですか?」

カ「カウンセリングと申しましても,難しいものではありません。家庭教師のよう

なもので,お父さんの傍で勉強を教え,常識を学んで頂くだけです。」

母「はぁ・・・」

カ「そして一週間後に控えてます『常識人間試験再試』を受けてもらいます。」

母「再試なんてあるんですか・・・」

父「・・・あの・・・資料に,試験が公開って書いてあるんですけど。」

カ「そうですよ。」

父「あの,本当に公開なんですか?」

カ「公開はお嫌いですか?」

父「嫌いとかじゃなくて・・・」

カ「じゃあ好きなんですか?」

父「いや,好き・・・?」

カ「愛してるんですか?」

父「愛して・・・?そうじゃなくて」

カ「遊びだったんですか?!」

父「はぁ?」

カ「ひどい人だ!」

父「ひど・・・?・・・いやだからそうじゃなくて,そもそも公開にどんな意味が

あるんですか?」

母「そういえばそうね。」

カ「試験に落ち,非常識とみなされてしまった方が一週間でどれほど常識人になれ

たかを,より多くの人にご覧頂き,認めてもらうためです!」

母「なるほど〜。やったわね,お父さん人気者よ!」

父「母さん,そうではなくて・・・。その,具体的には どのように?」

カ「試験は前回のような筆記形式ではなく,一問一答のクイズ形式になります。」

母「まぁ,テレビみたい!」

カ「その中でお父さんには100問中100問正解して頂きます。」

父「100問中100問?!」

母「まぁすごい!そんなにあるのね!」

カ「一問でも間違えられた場合,その時点で不合格となります。」

父「そんな・・・!」

母「大丈夫よ,お父さんならきっとできるわ。」

カ「そんなことよりお父さん!好きか嫌いかはっきりしてください!」

父「まだ言うんですか!」

母「そうね,その問題ははっきりさせるべきよ!!」

父「母さんまで・・・」

カ「さあ,好きか嫌いかはっきりしてください!」

母「お父さん。」

カ「さぁ!」

母「さぁ!」

カ・母「さぁさぁさぁさぁ!!」

父「・・・・・・好き?かなぁ・・・?」

カ「ふぅ。よかったこれではっきりした。」

母「母さんちょっとジェラシー。」

父「母さん?」

カ「落ち込まないでください奥さん。それだけ,あっちが魅力的だったってことで

すよ。」

父「あんたなぁ・・・さっきから随分論点ずれてないか?」

母「・・・そういえば・・・不合格になったらどうなるんですか?」

父「そうだ,そうだ。どうなるんですか?」

カ「まぁ,そうならないために私がいるんですが・・・不合格になった場合,常識

人間育成センター本部まで連行し,一年間常識勉強漬けになって頂きます。」

父「一年間もですか?」

カ「そうです。ですが,安心してください。私の授業をよく聞いていただければ,

間違いなく合格できます!」

父「はあ。どんな授業をするんですか?」

カ「わたしの授業はレベルに応じて5段階に分かれておりまして,お父さんにはそ

の中でも最重症のSランクの授業を受けて頂きます。」

母「すごいわ!SランクYO!」

父「母さんはもういいから黙ってなさい。・・・どんなことをするんですか?」

カ「まぁ実際やってみた方が早いでしょう。体験がてらやってみましょうか。では

動きやすい服に着替えてきてください。」

父「動きやすい服・・・ですか?」

カ「ええ!何と言ってもSランクですから!」

母「Sランクですものね!タンスにジャージが入ってますよ!」

父「あぁ・・・じゃあ着替えてくる。」

 

 父,去る

 

カ「しかし奥さんも大変ですねえ」

母「何がですか?」

カ「非常識なご主人を持たれて。」

母「そうかしら?」

カ「そうですよ!なんたって非常識なんですから。」

母「・・・う〜ん・・・大変なことなんてありません」

カ「なぜですか?」

母「主人は非常識じゃありませんから」

カ「は?」

母「私は主人を非常識な人と思ったことなんてないし,主人は非常識なことしたこ

とありませんから。あの人はきっと疲れてただけなんです。」

カ「そうですね,まあそう思いたい気持ちわかります。ショックを隠そうとして・・・

解ります。」

母「話聞いてましたか?」

カ「しかし奥さん,私がいれば安心です。私がご主人を真っ当な常識人にしてさし

あげます。」

母「・・・・・・」

 

父,ジャージ姿で登場。

 

父「着替えてきたぞう・・・」

母「あ,お父さん。」

カ「着替えてきましたか。それでは,緑川式Sランクを体験していただきましょう。」

母「お父さんがんばって!」

父「お,おう・・・」

カ「問題は常識人間試験に実際に出題されたものを使用します。それでは始めます

よ。第一問!『犬は英語でドッグ。では,りんごは?』」

父「アップル。」

カ「正解しましたね。では,これをどうぞ。」

父「これは?」

カ「アメです」

父「アメ?」

カ「それでは第二問!『アルファベットの15文字目は?』」

父「え?ABCDEF・・・」

カ「ブー!時間切れ。間違いましたね。正解はOです。ではこれを」

 

 カウンセラー,父を思いきりひっぱたく。

 

父「痛いっ!何をするんですか!!」

カ「ムチです。」

父「はぁ?」

カ「これぞ緑川式Sランク『究極のアメとムチ』です。」

父「アメとムチぃ?」

カ「教育において『アメとムチ』という方法がもっとも適していると言うことは,

一般常識の一つです。」

父「何言ってんだこの人。」

母「へぇ・・・そうなんですかぁ・・・(感心)」

カ「試験に集中してください!どんどんいきますよ!第三問『35+67は?』」

父「へ?え,えと・・・」

カ「遅〜〜〜い!!(殴る)第四問『酸素を元素記号で表すと?』」

父「元・・・?」

カ「遅〜〜〜い!!(殴る)第五問!『梅と酢,どっちが酸っぱい?』

父「はぁ?!」

カ「(殴る)第六問『今,あなたの後ろにいるおばあちゃんは誰?』」

父「誰?!」

カ「(殴る)第七問『私のこと,好き?』」

父「知るかぁ!!」

カ「ひどい!!(殴る)」

父「ちょっと待て何だ今の問題は?!」

カ「私の気持ちです。」

父「じゃあその前の,おばあちゃんは?!」

カ「私のオリジナルです。」

父「作んな!!」

カ「えー只今の結果,正解は7問中1問。・・・絶望的ですね。」

父「だけどなぁ!」

カ「口答えしないでください。あなたは間違えたんですから。」

母「でも今のは早すぎるんじゃ・・・」

カ「奥さん,甘いですよ。こんなのにも反応できないんじゃ再試に合格なんてでき

ませんよ。」

母「でも・・・」

父「それにしたって早すぎだ。そんなんじゃ出来ないに決まってるだろ!」

カ「文句は結構。今は常識を身につける方が先でしょう?あなたは自分の置かれて

いる立場というものをもっと理解した方がいい。非常識なあなたにはカウンセ

ラーである私に逆らう権利などないんですよ」

父「権利って・・・」

カ「いいですか?ご主人は今一般社会に適応しきれていない人間なんです。そんな

人間を正すために私達が救いの手をさしのべているんです。文句どころか感謝

してもらいたいくらいだ。」

母「だけど・・・」

カ「それから奥さん,非常識な人間をつくり出してしまうのは周囲の人の影響であ

る可能性も高いんですよ。家にいるとき娘さんと二人して均さんをイビったり

したんじゃないんですか?」

父「家族を悪く言わないでくれ!!」

カ「・・・ご主人も家族の所為にしてしまえばいいのに。その方が楽でしょうに」

父「私はそんな人間じゃない!!・・・もう帰ってくれ」

カ「いいんですか?カウンセラーの私がいなかったら,あなたなんかじゃ絶対合格

できませんよ」

父「・・・・・・」

カ「いいんですか?ずっと,非常識のままで」

父「そんなもんは!」

娘「そんなもんあたしがどうにかしてやるわよ!!」

三人「??」

 

 娘,悠然と出てくる。

 

娘「さっきから黙って聞いてればベラベラベラベラとムカつくこと言ってくれるわ

ねホントに!」

母「みちよ」

父「みちよ」

カ「あなたが娘さんですか?」

娘「そうよ,あんたの嫌いな非常識の娘よ!」

カ「そうでしたか,お気に障るようなことを言って申し訳ありませんでした」

娘「その人を小馬鹿にした態度がますますムカつくわ」

母「みちよあのね」

娘「ええ一部始終ふすま越しに聞かせてもらったわよ。私がいなかったらあなたな

んかごうかくできませんよってあんた何様のつもりよ!たかだか教えりゃい

いだけでしょーがそんなん誰でもできるっつーの!」

カ「言ってくれますね,いいでしょうじゃああなたが教えてやればいい。落ちたっ

て私は責任取りませんよ」

娘「あーあーあーいいじゃないの上等だわ!完璧にしちゃるわよ!」

カ「お手並み拝見と行きましょうか!」

 

 お互いにらみ合い,火花が散る

 

娘・カ「ふんっ!」

カ「私はもう帰ります!こんな理不尽なことをされたのははじめてだ!でもそうだ,

このテキストとテストの結果分析書は置いていきましょう。武士の情けです」

 

 カウンセラー バッグを置く。

娘「情けぇ!?そんなもの・・・いらないわよ(バッグをしっかり胸に抱え込む)」

母「いるんじゃない」

カ「それでは,常識人間試験合格楽しみにしてますよ!」

 

 カウンセラー,去る

 

 娘,硬直

 

父「みちよ?」

母「みちよ?」

娘「・・・・・・んっんっんっ!くっくっく!はっはっは!だーはっはっは!・・・

どうしよ」

母「どうしよってみちよ,自信満々なんじゃないの?」

娘「なワケないじゃない!」

父「じゃあなんであんなこと言ったんだ?!」

娘「見栄よ見栄!あんまりにもむかっときて・・・つい言っちゃったのよ。」

父「あんなにすぱっと楽勝って言ったじゃないか?!」

娘「だからつい言っちゃったんだって!だってムカつくでしょあの変態!」

父「そりゃそうだったけどさぁ!じゃあお前が面倒見てくれるんだな?」

娘「やよ!お父さんの面倒なんて見たくないわよ!」

父「それは無責任だろ!」

娘「無責任じゃないもん!しょうがないじゃない!」

父「しょうがなくないだろ!」

娘「大体お父さんが試験落ちたからいけないんでしょ?!」

父「それとこれとは話が別じゃないか!」

娘「落ちてなかったらこんなこと・・・」

母「やるしかないわね・・・(大きな声で)」

父・娘「?」

母「もうあんなに大見栄切っちゃったんだもの。一発合格して鼻をあかしてやりま

しょ!」

父「でも母さんそんな簡単には・・・」

娘「一発合格なんてどうするのよ?」

母「私は一つの秘策を発見したわ!」

父「秘策があるのかい。」

娘「何?」

母「あれよぉー!(カウンセラーのバッグを指さす)」

父「出た・・・」

ナレーション「説明しよう。中畑の妻、千恵子は自分のモチベーションが高くなっ

てくると、しゃべりが宝塚口調になってしまうのだ!」

娘「また宝塚〜?」

父「仕方ないだろ!母さんのモチベーションが上がってきたんだから。とにかく母

さんに合わせるんだ!!」

娘「これ、はずかしいからやだぁ〜!!」

父「うだうだ言わずに合わせるんだ!でないと母さんは一日不機嫌だ!」

娘「でもぉ〜!」

母「フェルゼン、ヒトシ?」

父「何でしょうか、アントワネット千恵子?」

娘「あたしにこないで・・・(×5)」

母「このバッグがあたしたちの未来の鍵を握っているわ!」

父「拝見!」

娘「あたしにこないで・・・(×5)」

父「これは!?」

母「フリードリヒみちよ?」

娘「はい!お母様!(泣)」

母「これが何だかおわかり?」

娘「て・・・テキストでございますか?!お母様?!」

母「そう!テキストブックよ!」

娘「それが何か?」

母「このテキストには常識人間試験に出るあらゆる一般常識問題が網羅されている

はず!つまり!」

娘「つまり?!」

母「つまりこの問題を暗記すれば試験なぞ赤子同然よ!」

父「そうか!その手があったか!」

母「フェルゼン・ヒトシの専属コーチには、もちろん!フリードリヒみちよ!あな

たがつきなさい!」

娘「え〜あたし、やだぁ〜!!」

母「フリードリヒみちよ!そもそもこんな状況になったのは誰のせい?」

娘「ハイハイ喜んでやらせていただきますわお母様、ホホホ」

父「おお、なんとあなたは頭脳明晰、才色兼備な人なんだ!!」

母「いや、お恥ずかしい・・・」

父「そんなあんたを待っていた!是非私の后になってください!」

母「なんと、もったいないお言葉!!しかし私にはお父様に決められた許婚が…。」

父「おお…なんという事だ…。ならば…ならばせめて一度だけでもダンスを!!」

母「ええ…よろこんで!!」

父「Shall we dance?」

母「Shall we dance」

 

        BGM おどる二人 「Shall we dance?」のテーマで

 

娘「ついていけね。」

 

        だんだん暗転 「Shall we dance?」のテーマフェードアウト

 

 

 

 

 

    (↓製作中)

 

娘「フフフ…暗記は体で覚えるのよ!」

父「そうなのか?」

娘「そうよ!机に向かってチンタラやってたんじゃラチがあかないわ!」

父「何だこの竹刀は?」

娘「これは私の愛用。」

父「そんなの使ってるのか!?」

娘「そう。私は演劇部で鬼と呼ばれる女。わかったら河原までダッシュよ!!」

父「はい〜〜〜〜!」

娘「チンタラするなぁ!!」 バイィィィン!

父「ヒィ〜〜〜〜!!」

 

        父去る。

 

娘「合法的オヤジいじめ………いいかもv」

 

        娘、「プロジェクトA」のテーマと共に去る

 

        サイレントで様々な練習をする二人

        (スクワットや、「よくできました!」など)

 

父「テキスト開いて! テキスト開いて!」

娘「ラストォ!声だすゼ!」

父「テキスト開いてェ!!はぁ、はぁ、ヒィ、はぁ」

娘「はい次ィ!!」

父「あ〜、待って、待って、きゅうけい、ちょっときゅうけい。」

娘「あ〜もうしょうがないわねぇ〜。じゃ2分休憩。」

父「はぁ、はぁ。」

娘「2分ったったら次よぉ。」

父「はひぃ〜〜〜。」

力「ハイハイ、がんばってますねぇ…。」

 

        父娘、見る

 

力「どうりでうるさいと思ったらあなた達ですか。全く近所迷惑なんだ。これだか

ら非常識人間は…!」

娘「あんた…」

二人「だれ?」

力「失敬な!常識人間育成カウンセラーの…」

二人「だれ?」

力「緑川だぁ!」

娘「ごめん忘れてた。」

力「忘れるなぁ!」

娘「ウソよ。」

力「ウソかよ!」

娘「あんあたみたいなクソムカツク顔はそうそう忘れないわ!」

力「コホン。練習は順調に進んでるようですね。」

父「おかげ様でね。あんたに教わるより効率いいんじゃない?」

力「言ってくれますねぇ。ま、所詮非常識の遠ぼえ。どんだけやれるか期待してま

すよ。それじゃ。」

 

        力去る

 

        父と娘、見つめあい

 

娘「父さん…やるよ。」

父「おぅ!」

娘「よォし!武富士10本!!」

 

        暗転

 

    (↑ここまで製作中)

 

 

        明転

 

娘「名古屋は何県?」

父「愛知県。」

娘「赤信号、たとえみんなでもわたっては。」

父「いけない。」

娘「日本テレビで裏ワザを紹介する人気番組といえば伊東家の?」

父「食卓。」

娘「よし、195Pまでカンペキ! あと三日で75Pならおつりがくるね。」

母「すごいわお父さんまだ三日目なのに。」

父「しっかりしたコーチについてもらってるからなぁ。」

娘「当然でしょ。一流だから」

 

        一同笑う

 

父「じゃあちょっと父さんお風呂入ってくるよ。」

母「はーい。」

母「お父さん最近本当にがんばってるわね。」

娘「うん練習の時もすごいはりきるもん。だから最初の予定より60Pも進んでる

し。」

母「今のお父さんはみてるとなんだか…出会った時の事を思い出すわぁ。」

娘「お父さん昔どんな人だったの?」

母「とてもとんがった人だったわ。動物に例えるなら、そう…まるで野生のジャッ

カル…鋭い眼光を社交場の女達にギラつかせていたわ。」

娘「へーそんなんだったんだ…」

母「そして野生のジャッカルは当時銀座のクジャク姫と呼ばれていた女、そう私に

狙いを定めたのよ。」

娘「銀座のクジャク姫…。」

母「お互い一歩も引かず、一進一退の攻防だったわ。ぶち込むジャッカルのみ込む

クジャク!燃えたわ。」

娘「…もういいや。」

母「そしてその時できたのが…」

娘「もういい、もういい、もういい。」

母「えー、このお話は全15章にわかれるのよ。」

娘「わけんでよろうしい!」

母「つまりそのくらい激しい恋をしたのよ。」

娘「お父さんお母さんと仲いいもんね。」

母「あらでも今はみちよの方がお父さんと仲いいじゃない」

娘「そう?そんな事ないよ。あんまし変わんないよ。」

母「この調子だったらもうお父さんに話したの?」

娘「何を?」

母「何をって留学よ、留学のこと。」

娘「あ!」

母「何言ってないの?」

娘「うん、ここ最近練習に必死で…」

母「もうこの子ったら。」

娘「へへ、じゃあお父さんが上がってきたときにでも言うよ。」

 

 娘、カウンセラーのバッグをいじる。

 

母「そうなさい。」

娘「あれ?何これ?」

母「どうしたの?」

娘「なんか袋の中に封筒があんの。」

母「何の封筒?」

娘「えーっとね、あっ常識人間育成センターのやつだ。」

母「なにかしらねえ?」

娘「あっあれだよ!テストの結果分析書!」

母「結果分析書?」

娘「あのヘンタイカウンセラーがこのテキストと一緒に置いてったの忘れてた。」

母「そういえばそんなのあったわねぇ」

父「おーい母さん。」

母「はーい?どしたの?」

父「それが。」

母「父さん上がってくるからちゃんと留学のこと。」

娘「うん、わかってるよって。」

父「母さーん。」

娘「ねえお父さん。」

父「タンスからまたこんなものが。」

娘「わ゛――――――っ!!」

父「のわーーーーーーーっ!!」

娘「またあたしのブラぁ!」

 

 娘、父からとりあげる。

 

母「またやっちゃった。」

娘「お母さん、入れるとこ間違えないでって言ったじゃん!」

父「そうだよ、この前ヘンタイとまで言われたんだから」

母「ごめんなさい、ついトランクスとブラジャーを間違えるのよねぇ」

父・娘「間違えません!」

母「息ぴったりねぇ」

娘「そだ、お父さんコレ」

父「ん?何だこれ」

娘「テストの結果分析書だって、あのカウンセラーが置いてったやつ」

父「そういえば、そんなの置いてったなぁ」

母「お父さん開けてみて頂戴よ」

父「そうだな なんかヒントになることが書いてあるかもしれないし」

娘「今のペースなら全然大丈夫だけどねい」

 

 父、封筒をあける。

 

娘「何々 中畑均さま、常識人間試験の結果あなたに欠如しているものは『感じあ

う心』です。」

母「感じあう心?」

娘「それを身に付ける為にはテキストを闇雲に勉強しても効果がありません…って

これどういうこと?!」

母「効果がありませんて、」

娘「テキストの付録としてついている常識人間試験(実践編)を勉強することが効

果的です。付録?!」

母「付録ってこれ。」

 

 母、テキストから付録を発見する。

 

娘「え?常識人間試験(実践編)どうしてこんなもんがあんのよ!」

母「何で気づかなかったのかしら」

娘「ただ付録だと思って全くノーマークだったわ…」

 

 父、硬直

 

母「お父さん?お父さん?!」

 

 父、めまいで倒れる。

 

娘・母「わ゛ぁーーーーーーーっ!!」

娘「お父さん、大丈夫?!」

母「お父さん、お父さん!!」

娘「白目むいてるぅーーーーーー!!」

母「きゃあーーーお父さぁーーーーん!!」

娘「お父さん起きてぇーーーーー!!」

母「救急車!救急車よぉー死ぃーーなぁーーなぁーーいぃーーでぇーーー!!」

 

 どたばたしながら徐々に暗転、

 

 

 

 

 



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