9、
COと同時に下手側に明かりがつく
またしても、そこでばったり会うカトウとアメミヤ
アメミヤ:あっ。また残業ですか?大司令
カトウ :おお、君か。ああ、まぁそんなところだ
アメミヤ:ほとんど毎日、こんなに遅くまで働いてるんですか?
カトウ :最近になってからだよ、こんなに残業が増えたのは
アメミヤ:最近、ですか
カトウ :フレッシュメン。ヤツらが張り切れば、私の仕事は増える
アメミヤ:・・・そうですよね
カトウ :君こそ、こんなに遅くまで働いて。家の人は心配しないのか?そうだ、君は独
身か?
アメミヤ:あ、はい。・・・あ、でもフィアンセが
カトウ :ほう、そういうことか
アメミヤ:え?
カトウ :だから仕事を頑張ってるんだな。結婚するには何かと金がかかるものだ
アメミヤ:・・・実は、そうなんです。プロポーズはしたんですが、肝心の指輪を買う事
ができなかったから
カトウ :そいつは大変だ。指輪がなくては始まらないからな
アメミヤ:彼女は、いいって言ってくれてるんです。俺の仕事のことも、大変だって事を
理解してくれてるし。本当に、彼女には迷惑をかけっぱなしで
カトウ :そうかぁ・・・・。フフッ
アメミヤ:どうかしましたか?
カトウ :いや、私にもこんなころがあったのかと思うと、なんか妙に照れくさくてな。
まるで、昔の自分を見ているようだ
アメミヤ:あの、一つ聞いてもいいですか?今後の参考のために
カトウ :なんだ?
アメミヤ:大司令は、今の奥さんとは、その、どのように
カトウ :知り合ったかって事か?
アメミヤ:失礼なことを聞いているのはわかってるんですけど。こんなこと、大司令にし
か聞けないし。あ、別に変な意味じゃないんですよ。俺、小さいころに親父が事
故で死んで、それから母と二人で暮らしてきたから。親父がもし生きていたら、
今、こうやって大司令と話しているようなことを話したりするのかなって思って
カトウ :・・・・・そうだったのか
アメミヤ:スイマセン。何言ってんのかな、オレ。本当に、ごめんなさい
カトウ :今の妻と、薫子と知り合ったのは。ちょうど君くらいの年のころだったと思う
アメミヤ:奥さん、薫子さんって言うんですか
カトウ :いい名前だろ、なんか清楚で、静かそうで
アメミヤ:はい
カトウ :ところが、知り合ったころの彼女は、名前からは想像もできないほどの、ラテ
ンの風を感じさせてくれる女性だった
アメミヤ:ラテンの・・・風ですか
カトウ :ああ、あの時は、本当に燃えたよ。当時私は、この「ザイド」に入ったばかり、
そう、今の君と同じ戦闘員をやっていた。あまり人付き合いが得意じゃなかった
んだ、だから悩みを相談できる人とかいなくて、とてもつらかった
アメミヤ:・・・・
カトウ :そんなときだよ、当時の大司令、初代大司令のサイトウ様が、ちょうど今みた
いな感じで、私の悩みを親身になって聞いてくださった。そして、こう言われた
んだ。「自分を変えたいなら、今までと同じところにいちゃだめだ」ってねぇ。そ
して半ば無理やり、ディスコに誘われてね
アメミヤ:初代大司令がそんな人だったなんて
カトウ :意外だろ。君にこの前話したように、ココは普通じゃないのさ。どこまで話し
たかな・・・、そうだ、ディスコのところまで話したんだったな。私は、その時
初めてディスコに行ったんだ。まるで別世界だったよ、そこにいて、そこの空気
を吸っているだけで、なんだか自分が自分じゃないように感じてくるんだ。そし
て、そのディスコの中でひときわ目を引く、一人の女性がいた
アメミヤ:その女性が・・・
カトウ :そう、妻だ。彼女に一目ぼれしてしまってね、無意識のうちに踊ろうと彼女を
誘ったんだ。曲が始まって、私と彼女の間に言葉はなくなった、必要なかったか
らだ、目と目が見詰め合って、そして・・・・
ランバダが流れる、カトウとアメミヤは見つめあい、徐々に近づいていく
そして、手を取り合い、顔と顔が近づいて行く。ぎりぎりのところで曲が止まる
ギリギリはなれる二人
カトウ :危なかった。一瞬君の顔が、当時の薫子にみえた
アメミヤ:俺も、なんか場の雰囲気に酔っちゃって。もう、どうでもいいやってな具合に
カトウ :・・・・ハハ、ハハハハハ・・・
アメミヤ:アハ、アハハハハハ・・・・
カトウ :危なかったな
アメミヤ:ホントですよ。もう少しで、彼女以外のしかも男とキスするところでしたよ
カトウ :いやぁ、本当にすまなかった
アメミヤ:いいえ。それに、面白い話も聞けたし。とても参考になりました
カトウ :どんな風に参考になったんだ?
アメミヤ:そうですね・・・「女を落とすには、ランバダを踊れ!」。なんちゃって
カトウ :おいおいおい。そいつは手厳しいな
アメミヤ:今でも、こんな風にご婦人とは踊ってるんですか?
カトウ :いや。・・・・彼女は、こんなこと忘れてるかも
アメミヤ:え?
カトウ :彼女と結婚してから、私は、仕事に今まで以上に打ち込んだ。家族のために。
そう思えばつらいことなんてなかった。でも、皮肉なことに、家族のために頑張
れば頑張るほど、心はだんだんと離れていった。ほとんど毎日の残業、休日出勤
は当たり前。当然といえば、当然なんだがな・・・・
アメミヤ:・・・・スイマセン
カトウ :・・・君は。君は、私みたいなことにはなるんじゃないぞ。恋人を、家族を大
事にしろ。家族のための仕事なんだからな
アメミヤ:大司令・・・
カトウ :なんだかしゃべりすぎてしまったな。私はもう帰るが、君はどうする?
アメミヤ:あ、もう少し、仕事が残ってますんで
カトウ :そうか。じゃ、また明日な
去っていくカトウを見送る、アメミヤ
アメミヤ:お疲れ様でした
ポケットから、写真を取り出し、見つめる
アメミヤ:・・・・、俺、どうしたいいのかな・・・。ふぅ、さて、もう行くか
10、
走り去るアメミヤ、それと同時に全体の明かりがつく
タナカ、戦闘員、アメミヤ、カトウの順で登場、会議の体制に
カトウ :今回の会議は、前回はなしてあったと思うが、「フレッシュメンに勝つ方法」を
それぞれ考えてもらった。それを各自発表してもらおうと思う。では、最初に発
表してくれるのは、だれかな?
タナカ :波!あなたがトップバッターよ
波 :え?・・・はい
カトウ :では、話してくれ
波 :フレッシュメンに勝つ方法ですが、それはフレッシュメンに遭遇しなければい
いのだと私は考えました
タナカ :確かに遭遇しなければ、作戦の邪魔をされなくてすむわね
波 :ですが、なぜかフレッシュメンは我々の行く先々に現れて、邪魔をしてくるの
です
カトウ :では、どうやったら遭遇しないですむのかね
波 :フレッシュメンがなぜ、我々の行く先々で現れるのか。その原因は
カトウ :その原因は?
波 :音です
タナカ :音?音って、あの音?
波 :そうです。我々が現場に到着すると、よくこんな音が流れるんです
悪役のテーマが流れる
波 :こんなのが流れていたら、我々の居場所なんてすぐにわかってしまうんです。
そこで、わざと違う音を流すんです、例えばこんな感じの
のどかな曲が流れる
波 :コレで、ヤツらには気づかれません。完全に出し抜けるわけです
タナカ :なるほど、確かにコレは名案だわってな事をいうと思うかこのオバカ!!
タナカ、波に向かって針を発射
波 :うっ!!
タナカ :なんでもっとまじめに考えないの!!罰としてアンタには口がきけなくなるつ
ぼに針をうったわ。そのまま反省なさい!!
波 :んんんん・・・・・!!
タナカ :次!風、おまえが発表なさい!もし、くだらないモノだったら、わかってるわ
ね?
風 :ハッ!お任せください
カトウ :では頼む
風 :私は、対フレッシュメン専用に、新たな怪人「キラー」を開発しました。その
第一作目として、今回この場で発表させていただきます。その名も「対、地球戦
隊女性隊員限定!」女の敵、ヴァージンキラー!!
タナカ :そういうのは!!
カトウ :やめろ!!
どこからか取り出したハリセンで、風をどつくタナカとカトウ
倒れる風
風 :な、なんで?
タナカ :そのネタは18禁なのよ!いくら悪の組織でも、やってイイコトと悪いことって
モノがあるわ!!
風 :気が付かなかった・・・・ぐふぅ
タナカ :キィー!次ぃ!!
暗転、しばらくして明かりがつく
タナカとカトウ以外の人間が倒れてぴくぴくしている
タナカ :なんで、こうそろいもそろってオバカばっかりなの!もう、わけわかんなくな
っちゃったわよ!!
カトウ :結局結論は出なかったわけだが。会議・・・どうしようか?
タナカ :うーん・・・。あ、そうだ、思い出した。ちょっといいですか大司令?
カトウ :なんだ?
タナカ :アタシ、ずっと考えてたんだけど。侵入者って内部の人間じゃないかしら
カトウ :内部の人間?それじゃ、侵入者じゃないじゃないか
タナカ :そこが大事なところなんです。そもそも、誰が侵入者なんて言い出したのかし
ら。ただ不信人物が基地の中をかぎまわっているってだけで、どうして侵入者の
仕業になっちゃうわけ?
風 :確かに、そういう考え方もありますね
タナカ :アンタ、もう復活したの?
虹 :外部の人間が侵入するよりも、内部の人間にスパイがいるって考えた方が、自
然かもしれない
波 :だから、あの時制服を着ていたのか
アメミヤ:・・・・・
カトウ :ちょっと待て、どうしてそうやって仲間を疑うんだ
タナカ :あら、これが一番怪しいって思ったから、それを正直に言っただけですわよ。
それに、この手のパターンだと、大体場合スパイがいるって相場が決まっている
のよ
戦・全員:なるほど!
カトウ :なんでそんなことで納得してしまうんだ。いいか!内部の人間を疑うなんて事
は止めるんだ!こんなときだからこそ、お互いを信じあうんだ!
タナカ :・・・・・
カトウ :なぜ、黙ってる
タナカ :はい、わかりました・・・・
カトウ :わかってくれるならそれでいい、それじゃ各自仕事に戻ってくれ、解散!
それぞれその場を去っていく(タナカ以外)
タナカ :絶対に、内部の人間が犯人よ。ふんっ!カトウの老いぼれも、そろそろ潮時ね。
今こそ、このアタシ、タナカの時代だわ!!ウフフッ、アーッハハハハ!
11、
笑いながら去っていくタナカ
舞台は薄暗くなる、そこには知り込んでくるタナカと戦闘員達
タナカ :まただわ。完全に見失った
風 :畜生!
虹 :どうしますか?タナカ様
タナカ :おまえ達はもう一度この付近の区画をしらみつぶしに捜しなさい!絶対に逃が
すんじゃないわよ!!
風・虹 :ハッ!
走り去っていく風と虹。送れてその場に到着する波
タナカ :あんた、今まで何やってたの?
波 :それが、こんなものを拾いまして
タナカ :なによこれ、写真?
波 :一応持ってきてみたのですが
タナカ :この写真どこかで・・・・・・はっ!
波 :どうかしましたか?
タナカ :なんでもないわ、アンタもさっきの二人と同じ、この辺を探しなさい
波 :わかりました
去っていく波。写真を見つめつづけるタナカ
タナカ :ウフフ・・・・。そういうことだったのね・・・・・
12、
タナカ、その場を走り去っていく。舞台は明るくなりアメミヤが登場
アメミヤ:あれ?どこにやったのかな?まずいよ、アレを落とすなんて。もしほかの誰か
に見つかったりしたら
カトウ :おっ!今日は朝早いな
アメミヤ:大司令!いつからそこに?
カトウ :いや、たった今きたところだが
アメミヤ:そうですか
カトウ :何か、問題でもあったのか?
アメミヤ:いえ、なんでもないんです。なんでも・・・
カトウ :・・・・そうか。それならいいんだが
アメミヤ:・・・・あ、あの
カトウ :ん?
アメミヤ:・・・なんでもないです
タナカ :あら、大司令。今朝はお早いんですね。
カトウ :ああ、たまにはな
タナカ :毎日こうだと、言うことないんですけどね。ホラァ!さっさと集まんなさい!
朝の会議が始まるわよ!!
戦闘員達が集まってくる
タナカ :今日は、大司令様に提案がありますの。聞いてくださるかしら?
カトウ :ああ、かまわないが
タナカ :戦闘員達を含め、全職員達は先の侵入者騒ぎのせいで連日の徹夜続き。そんな
ことではみんな、いざって時に本来の力を出すことはできないわ。そこで、明日
一日をお休みにしてもらえませんでしょうか?もちろん全員ですわ
カトウ :こんな時期にか?
タナカ :こんな時期だからです。今まで、侵入者は少なくとも一週間以上の間隔で侵入
してきました、つまり、休みをとるなら今がチャーンス!!ってなわけなんです
カトウ :しかし・・・
タナカ :戦闘員達の士気も上がること請け合いですわよ。さぁ、どうかご決断を
カトウ :・・・・わかった。仕方がないが、君の言う通りだ。明日一日だけ、休業とし
よう
戦・全員:やったぁーー!!!
タナカ :アーッハハハハハ!!
アメミヤ:・・・・・
カトウ :というわけだから、今日一日はしっかり働いてくれ。明日は休みだからな。で
は、各自仕事に入ってくれ、解散!
アメミヤ以外の戦闘員が、その場に残って話し始める
虹 :それにしてもさぁ、一体どういう風の吹きまわしだ?
風 :俺たちに休みをくれるなんて
波 :何か調子狂っちゃうよなぁ・・・
風 :何か,裏があったりして・・・
タナカ :聞いたわよ、今の話
戦・全員:え!?
タナカ :覚悟はできてる?
戦・全員:し,失礼しましたぁ!!
暗転
舞台上から声だけが聞こえる
声 :こちら、雨。決行日が決まった。明日だ。明日で、すべてが終わる・・・。通
信を終わる
13、
舞台上は薄暗い、その中に一人の人影がある、侵入者だ
当たりを気にしながら奥へと向かう。半ばまで過ぎたところで、明かりがつく
戸惑う侵入者、タナカの声が響く
タナカ :ウフフッ、アーッハハハハハハ!まんまと罠にかかってくれたわね、間抜けな
侵入者さん。・・・・おっと、逃げ出そうとしてもだめよ。アンタは完全に囲まれ
ているんだから、出てきなさい!
周りを囲むように登場する、戦闘員達
タナカ :アーッハハハハハハハハハ!前にもいったけど、今回も言うわ。アンタはまさ
に袋のミッキーマウス!!今度こそ、本当にね!無駄なあがきなんなかしないで、
さっさと正体を見せなさい!もうすべてばれちゃってるんだから
侵入者、銃を構えようとするが田中の投げた針にはじかれて落としてしまう
タナカ :無駄なあがきは止めなさいっていったでしょ。早く正体を明かしちゃいなさい
よ!それとも、アタシが変わりに話してあげましょうか?自分から言いにくいみ
たいだから。ねぇ、戦闘員「雨」。こう呼んだほうがいいかしら?フレッシュメン
アメミヤ隊員!!
覆面を取るアメミヤ
タナカ :ほら、アタシのにらんだ通りだった。始めっからアンタの事はくさいと思って
いたのよね
アメミヤ:黙って通してはくれないよな・・・
タナカ :そんなこと、だめのだめだめよ!あなたはアタシのトリコにしてやるんだから!
ウフフフッ!この瞬間を待っていたのよ、アンタとアタシの二人だけの時間。大
切にしなくちゃね
アメミヤ:できれば遠慮したいんだが
タナカ :ダ・メ。ウフフッ。そうだわ、あんたにふさわしいレクイエムを用意してある
のよ。きっと気に入るわ!さぁ、流して頂戴
波、ポケットからリモコンを取り出しスイッチを入れる
デビルマンの歌が流れる
タナカ :うふっ、アタシにぴったり。って違うじゃねぇかよこのやろう!!
アメミヤ:それがオマエの本性か?
タナカ :あら、なんのことかしら?とにかく、さっさと流して頂戴!!
今度は、別のBGMが流れる
タナカ :これよこれ、コレこそアタシとアンタのダンスにふさわしいわ!
アメミヤ:ダンス?
タナカ :そうよ、地獄までノンストップ、死と狂気のダンスよ!!
アメミヤ:やるしか、ないのか・・・・
タナカ :誰も手を出すんじゃないわよ、何なら帰ってもいいわよ
戦・全員:・・・・・お疲れ様でしたぁ!
タナカ :ちょ、ちょっとアンタ達。本当に帰っちゃうなんて、そんなのひどいじゃない
のよ!ねぇ、ちょっとぉ!!
アメミヤ:ずいぶんと部下に慕われてるな
タナカ :っさいわねぇ!噛むわよ!!
アメミヤ:で、どうするんだ?これから
タナカ :手始めにアンタを殺すってのはどう?
アメミヤ:あんまりお勧めしないな。そういうのは
タナカ :アタシはそういうの大好きよ・・・さぁ、いくわよ!
バトルスタート!タナカの優勢のまま追い詰められていくアメミヤ
タナカ :あらあら、口ほどにもないわねえ。もう終わりなのかしら?
アメミヤ:くっ・・・・
タナカ :このまま戦っていても、つまらないわ。飽きちゃった。そろそろ、死ぬ?
アメミヤ:こうなったら、アレを使うしかないのか・・・
タナカ :アレ?何よ、なんなのよ!
アメミヤ:地球戦隊フレッシュメンの、最終兵器さ!
タナカ :だから、なんなのよ。もったいぶらずに早く見せなさいよ!!
アメミヤ:そこまで言うなら、見せてやるさ!!オメガクラスター!!!
アメミヤ、ヘッドホンをつけてマイクを片手にポーズ
そのままストップモーション
声 :説明しよう!このオメガクラスターはあまりの破壊力のため地球戦隊の中でも
特に取り扱いに注意しなければならない、最強最終兵器だ。あのマイクのような
生態エネルギー採取機に人間の「頑張れフレッシュメン!」という声を入力する
と、あのヘッドホンのようなオメガエネルギー発生装置より、使用者の体内にオ
メガエネルギーが流れ始める。オメガエネルギーとは人間の限界を超えた力を引
き出す未知の成分でこうせいされた・・・」
タナカ :長すぎるのよ、このオバカ!!
アメミヤ:というわけだ、オメガエネルギーが体内に流れれば、オマエに勝てる
タナカ :流れればね。でも、どこからそんなエネルギーをもってくるのかしら?声を入
力してくる人なんてココにはいないわよ
アメミヤ:いるさ、しかもこんなにたくさん
タナカ :・・・ま、まさか?
アメミヤ:(客席に向かって)みんな、今聞いてもらった通りだ。どうしても、俺はこいつ
を倒さなくちゃならない。俺に、俺に力を分けてくれ!俺の合図で、一斉に叫ん
でくれ。じゅんびはいいか?いくぞ!いっせーのっせ!
客席から声が聞こえてこないときは強引に進めてください
アメミヤ:うおぉ!来た、来たぞぉ!!コレがオメガパワーか!
タナカ :アンタ、今のは反則よ!!客席語りかけるなんてルール違反だわ!!
アメミヤ:正義は勝つ!!
タナカ :キィー!!みんなしてアタシを馬鹿にして!
アメミヤ:この一撃にすべてをかける。コレで最後だぁ!!
渾身の一撃同士のぶつかり合い。勝ったのはアメミヤ
倒れ込むタナカ
タナカ :こんなの、納得できないわ!ちょーむかつくぅぅぅぅ!!
動かなくなるタナカ
そのタナカを見つめた後、先へと進むアメミヤ
暗転
14、
明かりがつく。基地の中枢の一歩手前というところに、アメミヤは来ていた
傷ついているアメミヤ、たっているのもいっぱいいっぱいだ
そのとき、目の前にカトウが現れる
カトウ :君が、そうだったのか・・・・
アメミヤ:大司令、そこを通してください
カトウ :それはできない
カトウ、アメミヤに向けて銃を構える
アメミヤ:・・・・正直、あなたを騙すのはつらかった。俺の話をちゃんときいてくれた
のは、あなただけだったから。だから、あなたとの話はほとんどが本当のことだ。
恋人のこと、仕事のこと。それは本当だった
カトウ :おかげで、私は騙された
アメミヤ:俺はフレッシュメンだ。地球の平和を守るのが、俺の使命なんだ!
カトウ :なら、私の使命はこの「ザイド」を立派に守り抜くことだ。先代と交わした約
束、誓い。それが、私の仕事だ!そのためにすべてをなげうってきた、家族との
生活も、すべてを犠牲にしてきた。いまさらやめることはできない
アメミヤ:・・・・あなたは、俺にこう言ってくれた。「自分の仕事をしろ」と。本当はこ
の任務、少しくじけかけていたんです。でも、あなたの言葉でくじけずにすんだ。
あなたのおかげだ。でも、間違ってる。仕事のために、すべてを犠牲にする。そ
んなのは、そんなのは間違ってる。自分のために、そして自分の大切な人のため
に、人は生きるものなんだ!仕事のためなんかじゃないんだ。誰かのため、自分
のためなんだ!あなたも、昔はそう思って仕事して、人生を歩んできたはずだ。
そうだろ・・・
カトウ :わ、わたしは・・・・わたしは・・・・・
カトウ、銃を落とし、くず折れる
傍らで見つめるアメミヤ
突如鳴り響く警報
アメミヤ:な、なんだいったい?
カトウ :誰かが、自爆装置を作動させたんだ
スピーカーから、タナカの声が聞こえる
タナカ :ご名答!このアタシが作動させたのよ。ウフフフフッ。こうなったらもう何も
かもオシマイだわ!いや、アタシがオシマイにしてあげるわ!!アーッハハハハ
ハハハ!!
アメミヤ:早く逃げないとやばいぞ!
カトウ :・・・・・・
アメミヤ:おい!あんたの仕事は、生涯をかけて家族を守り抜くこと。自分の仕事を投げ
出すな!!向き合って、戦えぇぇ!!
カトウ :・・・えらそうに
アメミヤ:え?
カトウ :特別脱出口がこっちにある。ついて来い!あと数分で爆発するはずだ!
カトウ走り去って行く。続いてアメミヤも同じ方向に
暗転。しばらくして、遠い爆発音
明かりがつくと、そこに立っているカトウとアメミヤ
カトウ :・・・コレで
アメミヤ:・・・・・
カトウ :コレで「ザイド」も、・・・・終わりだな・・・・
アメミヤ:さっきは、えらそうなことを言ってしまって
カトウ :(首を振る)・・・・・
アメミヤ:え?
カトウ :おかげで、・・・・目がさめた
アメミヤ:大司令
カトウ :もう、大司令じゃない。カトウでいいよ
アメミヤ:カトウさん・・・・あの
カトウ :結婚式には、招待してくれよ
アメミヤ:ええ、奥さんと一緒に是非
ハルヤマ:(遠くから)おーい、アメミヤどこだぁー!
アメミヤ:仲間が来ました。早く行った方がいい
カトウ :しかし、私は・・・
アメミヤ:早く、俺が何とかしますから。あなただけのためじゃなくて、あなたの家族の
ためでもあるんだ。さ、行って
カトウ :ありがとう
カトウ、走り去る
入れ違いで入ってくるハルヤマ
ハルヤマ:こんなところにいたのか。探したぞ
アメミヤ:ああ、すまなかったな
ハルヤマ:さて、後はこの周辺の探索だな、まだ「ザイド」の連中が残ってるかもしれな
いからな
アメミヤ:いや、あの基地の爆発を見ろ。みんな、吹き飛んじまったよ
ハルヤマ:しかしだなぁ
アメミヤ:俺たちの任務は、基地の制圧および組織の壊滅。それ以上でも、それ以下でも
ない
ハルヤマ:・・・・OK!わかったよ、その代わり、報告書はおまえがかけよな
アメミヤ:ははは、わかったよ・・・。こちらアメミヤ、ザイドの壊滅を確認、作戦終了、
これより帰還します
徐々に暗転
※エピローグ
明かりがつく
袖からカトウが登場、ネクタイを締めながら、早足で。
カトウ :はぁ、このままじゃ遅刻だ。早く行かないと、まずいぞ。おーい!早くしてく
れよ!・・・え?あぁ。私が仕事をやめてから、もう三ヶ月か。あっという間だ
った気がするな
沈黙
カトウ :え?何考えてるんだって?私には、仕事を辞めてからの三ヶ月も、仕事をして
きた二十年以上の時間も、あまり変わらないなと思ってね。働き始めたのが、つ
い最近だったように思える。もし、今も仕事を続けていたとしたら・・・こんな
風には、思えなかったんだろうな、きっと。
大切な人のための、仕事かぁ・・・
沈黙
カトウ :おい、もう本当に時間がまずいぞ。・・・へ?お、おい。何でそういう話になる
んだよ。・・・そりゃー、あのころと同じだよ。どんな気持ち?って、おまえ、そ
れは・・・だから同じだよ、おまえと同じ。・・・ちゃんと言って!って・・・わ
かったよ、言うよ。・・・・・あ、愛してる。愛してるよ
完全に暗転
少しして、電話のコール音
スポットで袖を照らす
カトウ :はい、カトウ。あ、すまないアメミヤ君。これから急いで向かうから、もうし
ばらく待ってく・・・
袖から伸びる手が、カトウが電話を持つ手をつかむ
カトウ :何だ、薫子。今、アメミヤ君と・・・っ!
いきなり引っ張られるカトウ。上半身が袖の中に。
しばらくして、
カトウ :ぷはぁ!・・・ラテンの風だ・・・うわぁ!
今度は一気に引っ張られて、暗転。
おしまい
前に戻る
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